注文住宅の購入を検討していると、「長期優良住宅」という言葉や、そのメリットを目にすることが多いでしょう。長期優良住宅とは法律による諸条件をクリアした住宅を指しますが、その条件とは具体的にどういった内容なのでしょうか。
この記事では、長期優良住宅の認定基準やメリット・デメリット、家づくりのポイントまで詳しくお伝えします。納得のいく家づくりをするための参考にしてください。
長期優良住宅とは、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の条件をクリアした住宅のことです。劣化対策や耐震性、省エネルギー性など条件がいくつかあり、所管行政庁に申請し、認定を受けることで「長期優良住宅」として認められます。長期優良住宅には税制面や住宅ローン面などで多くの優遇があり、認定戸数は10万件程度。新築戸建住宅の4軒に1軒が認定を受けているともいわれています。
長期優良住宅の条件(認定基準)は9つです。それぞれの概要を見てみましょう。
条件(認定基準) | 概要(要件の一部を抜粋)※新築住宅の場合 |
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劣化対策 | 【木造・鉄骨造の場合】 劣化対策等級3の基準に適合し、かつ構造の種類に応じた基準に適合している 【鉄筋コンクリートの場合】 床下空間の有効高さ確保や床下・小屋裏の点検口の設置などを行う 水とセメント比率を減らすといった対策が行われている |
耐震性 | 以下のいずれかに該当 ・耐震等級2の基準に適合している ・耐震等級1の基準に適合しており、かつ安全限界時の層間変形を1/100(木造の場合1/40)以下である ・品確法に定める免震建築物である |
維持管理・更新の容易性 | 以下のいずれかに該当 ・維持管理対策等級(専用配管)の等級3 ・維持管理対策等級(共用配管)の等級3 ・更新対策(共用排水管)の等級3 |
可変性 | 躯体天井の高さが2,650mm以上である |
バリアフリー性 | 将来的なバリアフリー改修に対応できること 高齢者配慮対策等級3 |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級5および一次エネルギー消費量等級6の基準に適合 |
居住環境 | 地域の良好な景観形成に配慮されている、地域の街並みに調和している |
住戸面積 | 戸建ては75平米以上、共同住宅は55平米以上 1フロアで40平米以上(階段を除く) |
維持保全計画 | 定期点検や補修の計画が作られていること |
参考:長期優良住宅に係る認定基準 技術解説 | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
長期優良住宅を建てることには多くのメリットがあります。代表的なメリットを5つお伝えします。
最大のメリットともいえるのが税制面の優遇です。たとえば次のような税が優遇されます。
優遇措置のある税金 | 内容 |
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住宅ローン減税 | 住宅ローン減税 住宅ローンで新築住宅を建築した場合、12月31日時点での借入金残高の0.7%が所得税・住民税から控除される(13年間) |
不動産取得税 | 住宅や土地を購入する際に発生する税金。一般住宅の控除額が1,200万円なのに対して長期優良住宅は最大1,300万円控除される |
登録免許税 | 住宅や土地の所有権を登記する際にかかる税金。長期優良住宅であれば保存登記で0.1%、移転登記0.2%、税率が引き下げられる |
固定資産税 | 住宅や土地の所有者に課税される税金。新築で税額が2分の1になるが長期優良住宅の場合、期間が5年に延長される(一般住宅は3年) |
長期優良住宅かつ住宅ローン「フラット35」を利用した場合、ローン金利が引き下げられます。具体的には、「フラット35S(金利Aプラン)および維持保全型」を契約した場合、金利が当初5年間、年0.75%引き下げられます。
また長期優良住宅では、最長50年の全期間固定金利ローン「フラット50」も利用可能。住宅ローン付きで売却できたり、売却時に購入者へ金利を引き継ぎできたりします。
長期優良住宅をローンなしの自己資金で購入した場合も、「投資型減税」の優遇を受けられます。投資型減税とは、長期優良住宅の建設でかかった追加費用が一定額控除される制度です。
耐震性やバリアフリー性など「性能向上」のために必要な費用が、所得税から10%控除されます。控除対象となる費用上限は650万円なので、その10%にあたる65万円が控除限度額です。
長期優良住宅では、保険会社に所定の書類を提出することで地震保険料が割引されます。割引は「耐震等級割引」と「免震建築物割引」の2つ。
耐震等級2で保険料が30%、耐震等級3で保険料が50%割引されます。建物が免震建築物に該当する場合も50%割引されます。
長期優良住宅を建てる際、補助金を受け取れる可能性があります。具体的には「地域型住宅グリーン化事業」と呼ばれる制度です。地域における木造住宅に対して支払われる補助金で、地元の工務店に依頼すること、地域材を使った省エネルギー性の高い住宅を建てること、などが条件となります。
長期優良住宅には多くのメリットがある反面デメリットも存在します。とくに以下の3つには注意が必要です。
長期優良住宅は一般住宅と比べて性能が高いため、性能向上のための工事を追加でおこなわなければなりません。そのため工事自体はもちろん、設計の段階から時間がかかります。
また、長期優良住宅の申請は着工前におこなう必要があり、申請には所定の手続きを踏まなければなりません。承認されるまでも手間がかかるため注意が必要です。
長期優良住宅の承認を得るには、劣化対策から耐震性、バリアフリー性、省エネルギー性などの条件を満たさなければなりません。たとえば省エネルギー性を高めたい場合、住宅の気密性や断熱性を高めるための工事をおこなう必要があります。
一般住宅では使わない素材や工法を用いる場合も多く、コストが必要です。そのため建築費全体が高くなる傾向にあります。
長期優良住宅として認定され、無事に入居できても、その後メンテナンスをおこなわなければなりません。これには、条件の最後にある「維持保全計画」が関係します。
同条件には「定期点検や補修の計画が作られていること」と記されており、つまり認定を受け続けるためにはメンテナンスを継続しなければならない、ということです。建てて終わりでなく、その後のメンテナンスが必要であることを覚えておきましょう。
長期優良住宅として認定を受けるためには条件を満たす必要があるため、慎重に検討し、目的や予算に合った建築会社を選ぶ必要があります。長期優良住宅における家づくりのポイントを3つお伝えします。
まず重要になるのが、工務店やハウスメーカーの選定です。長期優良住宅を建てるわけなので、「予算内に収めてくれるから」「担当者が良い人で信頼できそう」といった理由だけで選ぶと、失敗する可能性があります。失敗しないためにも、その建築会社に「長期優良住宅」の実績があるか、をしっかりと調べましょう。
公式ページはもちろん、店舗や担当者に直接聞いてみることが大切です。条件に対して具体的にどういった工事をおこなっているのか、費用はどのように変動するのかなど、長期優良住宅を建てるにあたって気になるポイントを聞いたうえで、最終的に納得のいく建築会社を選びましょう。
長期優良住宅の申請フローは複雑で、申請は着工前におこなう必要があります。簡単なフローは次のとおりです。
申請時には、設計内容の説明書や図面、計算書など多くの書類を提出しなければなりません。書類の準備や整理に時間がかかるため、しっかりと事前準備をしておきましょう。
お伝えしたとおり、長期優良住宅は省エネルギー性が高く、長く住み続けられる住宅です。しかし、一般住宅と比べて建築コストは高くなります。
光熱費は安くなるものの、入居後のメンテナンスにも手間や費用がかかる可能性も高いです。そのため、将来の生活を見据えながら、本当に費用対効果があるのか入念に調べておきましょう。
長期優良住宅の条件には、劣化対策や耐震性、省エネルギー性など合計で9つあり、所管行政庁に申請し、認定を受けることで「長期優良住宅」として認められます。長期優良住宅は、税制面や住宅ローン、地震保険料、補助金など経済的なメリットが多いです。
その一方で設計や申請に手間がかかったり、一般住宅と比べて建築コストが高くなったりと懸念点もあります。長期優良住宅を建てる際は、実績のある建築会社を選ぶことに加え、本当に費用対効果があるのか入念に調べることが大切です。
なお、長期優良住宅を建てるのにおすすめの素材として「レンガ」があります。レンガ住宅は耐久性や断熱性、気密性が高いことから、メンテナンスの手間やコストを軽減可能。
長期優良住宅に求められる「メンテナンス」の要件もクリアしやすいといえます。建築コストに関しても、一般的なハウスメーカーと変わらない費用で、寿命が3倍の家づくりを実現できます。
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