「海沿いに家を建てたい」「サーフィンやマリンスポーツを毎日楽しめる生活がしたい」
海が好きな方なら、誰でも一度はこのような憧れを持つことでしょう。
しかし、海沿いに住む場合、内陸とは異なる環境の特徴から、塩害に強い家を設計する必要があることをご存知でしょうか。
本記事では、塩害に強い家を建てるために、次のポイントについて詳しくお伝えします。
ぜひ本記事の内容を、ご自身の家づくりにお役立てください。
塩害とは、塩分によって建物や作物にもたらされる被害のことです。海沿いの地域における「潮風」による建物の塩害や、降雪地域の道路に撒かれる「融雪剤(塩化カルシウムや塩化ナトリウム)」による自動車への被害などがあげられます。とくに海沿いの地域に家を建てようと考えている方は、塩害対策が必要不可欠です。
海沿い地域で塩害が起こる主な理由は「潮風」です。潮風が影響を与えるエリアは広く、海岸から5キロメートルまでは塩害に注意すべきでしょう。風の強いエリアだと、10キロメートル以上離れた場所でも塩害が発生します。
台風が起きた際は、普段塩害が発生しないエリアでも強風によって塩害が起こるケースが多くあるのです。
塩害は住宅にさまざまな被害をもたらします。代表的な被害は次のとおりです。
塩分によって、自動車やポストなどがサビてしまう被害です。とくに自動車の被害は顕著であり、金属でできた部品がサビることで、車が劣化してしまいます。日常的な風にさらされている「ポスト」も塩害の被害を受けやすいです。サビることでポストが開けにくくなるといった問題もよく起こります。
外壁は潮風をダイレクトに受けるため、塩害の被害を受けやすいです。ほかにも、エアコンの室外機や給湯器など外に設置した住宅設備も影響を受けやすい場所といえます。室外機や給湯器は「スキマ」ができやすく、スキマから塩分が入り込むことで設備自体が劣化し、消耗スピードが早まってしまうのです。
塩害によって住宅の窓ガラスが曇るケースもあります。潮風に含まれた塩分が、太陽光や空気中のガスと化学反応によって結びつくことで、ガラス全体が白く見えてしまうのです。
海沿い地域に住んでいる限り、塩害は避けて通れません。しかし、塩害に強い家を建てることは可能です。塩害に強い家を建てるポイントをいくつか紹介します。
海沿いに家を建てる場合、どのエリアに建てるべきか検討しましょう。冒頭でお伝えしたとおり、塩害が起こりやすいのは海岸から5キロメートル圏内のエリアです。そのため、5キロメートル以上離れている場所に建てるのが適切といえます。しかし、強風にさらされやすい地域などでは、10キロメートル以上離れていても塩害の影響を受ける場合があります。
ただし、海から距離が離れすぎると、生活のストレスになる可能性もあるでしょう。たとえば、元々マリンスポーツを楽しむために海沿いに移住するはずが、海から距離が離れすぎて、かえって楽しめなくなるといったケースです。居住を検討している地域の特性を理解したうえで、適切なエリアを選びましょう。
塩害に強い家を建てる際は、住宅の「屋根」や「外壁」を意識しましょう。塩害では金属がサビてしまう被害が起こりやすいため、金属の含まれていない素材や、金属が含まれているが塩害対策が施された素材がおすすめです。
屋根の素材としては、ガルバリウム鋼板やSGL鋼板(スーパーガルテクト)、ジンカリウム鋼板(ディプロマットスター)などがあげられます。
外壁の素材では、タイルやレンガ、ガルバリウム鋼板、樹脂系サイディングなどがおすすめです。なかでも「樹脂系サイディング」は、プラスチック素材の「塩化ビニル樹脂」が使用されているうえ、耐久性にも優れています。
また、レンガは塩害に強いだけでなく、蓄熱性が高いことから、外の暑気や冷気を吸い取ってくれます。夏は涼しく冬は暖かい、理想的な住環境をつくるうえでも活躍する素材です。
海沿いに家を建てる際は、家の外に配置する設備の場所も慎重に考える必要があります。具体的には、給湯器やエアコンの室外機、換気扇などです。本体はもちろん、本体と外壁のスキマに塩分が付着して故障を招く恐れがあります。そのため、海から反対側の場所など、潮風の影響を受けにくい場所に設置することが大切です。
塩は一度付着すると簡単に落ちないため、設備を雨に当たる場所に設置し、汚れを落ちやすくする対策も有効でしょう。
海沿いのエリアでは、塩害だけでなく、潮風による「湿気」の影響も受けやすいです。そのため、湿気のこもりにくい構造の住宅を建てる必要があります。たとえば、次のような例があげられます。
上記のような施工で、湿気のこもらない住宅を建築しましょう。
塩害を防ぐためには、「家の形状」も意識すべきといえます。潮風にさらされても塩害を最小限に抑える形状が効果的です。具体的には、「凹凸の少ない住宅」があげられます。正方形や長方形などシンプルな形状の住宅がおすすめです。
凹凸が多いと、塩や砂が入りやすく建物が劣化しやすくなります。メンテナンスにも手間がかかるので、海沿いに家を建てる際は、できるだけ凹凸の少ない住宅がおすすめです。
ハウスメーカーや工務店を選ぶ際、その業者が「塩害対策」の実績をもっているか確認しましょう。海沿いエリアでは、工法や設備の配置など、塩害を防ぐための独自の対策が必要です。海沿いの住宅に強いハウスメーカーや工務店もあるので、事前にしっかりとリサーチしましょう。
ここまで塩害に強い家を建てるポイントをお伝えしましたが、さまざまな策を講じても完璧に塩害を防げるわけではありません。海沿いのエリアに住む以上、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
とくに次のようなメンテナンスを意識しましょう。
海沿いのエリアに住んでみると、外壁や設備、自動車などさまざまな場所に劣化やサビができます。何もせずに放置すると、ますます劣化が早まり、故障や破損につながりかねません。
塩害を防ぐためにも、住宅や周辺設備をこまめに清掃することが大切です。外壁はホースで洗い流すのが効果的といえます。設備や窓ガラスも塩分が付着して白くなりやすいため、可能な部分はホースで、それ以外は濡れたタオルで拭きましょう。
塩害に強い素材を使って外壁や屋根を作るのも効果的ですが、それだけでなく、定期的に塗料を塗り替えるのがおすすめです。有効な塗料として「フッ素塗料」があげられます。コストはやや高めですが耐用年数が長いため、メンテナンスの頻度を減らせます。
海沿いに家を建てる際、塩害以外にも気をつけるべき点があります。とくに次の3つには注意しましょう。
海沿いには埋め立て地があることも珍しくありません。家を建てる場所が埋め立て地だった場合、地盤が弱いため、地盤改良が必要となる可能性があります。地盤改良が必要な場合、その分コストが膨らむため注意が必要です。
海沿いエリアには津波や高潮のリスクがあるため、国土交通省が公開するハザードマップを確認しましょう。ハザードマップとは、当該エリアにどのような災害がもたらされるかを記したものです。津波による浸水被害や、液状化のリスクなどが明記されているので、必ず確認しましょう。
海沿いの町は、地域によっては観光客が多く訪れます。休日に多くの観光客が訪れるエリアで、かつ住宅の前が観光客の通り道になる場合、「観光客に敷地内を通り抜けられた」「騒音が大きい」などのトラブルが発生する可能性も考えられます。観光客がどのくらいいるか、通り道になっていないか確認しましょう。
本記事では、海沿いの家で起こりがちな「塩害」について、次のポイントを中心にお伝えしました。
塩害は、住宅をはじめ、自転車や周辺設備のサビや劣化を招きます。対策をせずに放置すると、ますます劣化が進み、大規模な工事や修繕が必要になる可能性もあるでしょう。
海沿いでの快適な生活を営むためにも、日常的にこまめな清掃やメンテナンスを心がけることが大切です。
神奈川県の工務店「せらら工房」は、塩害対策を施したレンガ積みの家の設計を得意としています。海の近くに家を建てたい方や、マリンスポーツを楽しめる家をご希望の方は、お気軽にご相談ください。