「愛猫と住むための家をつくりたい」「自分の家を持ったら猫を飼いたい」このように考え、猫と暮らすための家づくりを検討している方も多いことでしょう。
しかし、猫と人間の両方が快適に過ごすためには、どのように間取りを考え、どのような設備を用意すると良いのでしょうか。
この記事では、猫の性質や特性から、猫と暮らす家を設計する際のポイント・注意点などをご紹介します。
それでは早速、猫と快適に暮らすために、とくに押さえておきたいポイントを6つ紹介します。
本来、猫は「狩り」をする生き物であり、木に登ったり、野を走り回ったりします。そのため猫と暮らす際は、上下運動ができるよう「高所」を設置するのがおすすめです。代表例として、キャットタワーがあります。
キャットタワーとは、猫が自由に登り降りをしたり、隠れてくつろいだりできる設備のことです。なかには、爪研ぎ機能の付いたキャットタワーもあります。
キャットタワーをはじめ、高い場所にも猫が過ごせるエリアをつくることで、運動不足やストレスの解消が可能です。
一般的に、猫は1日あたり14時間程度寝るとされており、とくに「日が当たる場所」で寝るのを好みます。そのため、猫が日向ぼっこができる場所を確保しましょう。
日が当たる場所が確保されると、猫も人間と同じように、精神の安定につながるホルモン「セロトニン」が分泌します。
セロトニンは太陽の光を浴びることで分泌され、その日の気分や体調に大きな影響を与えます。愛猫の健康を考えるうえでも、日向ぼっこのできる場所は必須といえるでしょう。
猫には狩りをする生き物であり、その準備のため爪研ぎをする習性があります。それだけでなく、マーキングや気分転換のためにも爪を研ぐので、専用の場所を確保しましょう。
床に置くタイプや壁に垂直に設置するタイプなど、専用の爪研ぎ器があるので、適切な場所に設置してください。麻やカーペット、ダンボールなど素材もさまざまです。
猫は家の中をパトロールしたり、走り回ったりするため、とくにキッチン周りの安全面や衛生面には配慮が必要です。
猫には、タマネギやチョコレート、ブドウなど食べてはいけないものが一定数存在します。そのほかに、薬や電池など誤嚥リスクのあるものも置かないように気を付けましょう。
キッチンには、猫にとって興味のそそるものがたくさん置いてあるため、注意深く配置・収納することが大切です。
好奇心旺盛な猫は外に出たがるため、脱走防止対策も必要です。走り回った勢いで庭に飛び出してしまうことも珍しくありません。外に飛び出したまま遠くに行き、迷子になってしまうケースもあるため、内ドアやフェンスなどを設置しましょう。
小窓の設置を考えている場合は、縦または横方向にレバーやハンドルを動かして開閉する「すべり出し窓」がおすすめです。また、内ドアを設置する際は、ロック付きのペットドアを付けると、より安全性が高まるでしょう。
猫は不衛生な場所が嫌いであり、とくにトイレの環境には配慮が必要です。トイレが汚いと、ほかの場所に粗相をしてしまったり、ストレスが溜まったりします。
トイレ自体をシンプルなものにしたり、トイレ砂の入れ替えを近くに保管したりして、トイレをきれいに保てる工夫が大切です。また、猫には「落ち着いた場所で安心感を得たい」といった性質があるため、トイレは静かな場所に配置するのが良いでしょう。
続いて、猫と暮らす家を作るにあたって参考にしたい間取り例を紹介します。
猫は基本的に室内で飼育しますが、ただ地面にキャットウォークを設置するだけではストレスも発散しにくいでしょう。そこで、住宅設計の際に「吹き抜け」を設置し、天井に続くようなかたちでキャットウォークを設置するのがおすすめです。
猫が高いところに登れるのはもちろん、太陽の光も入るため運動不足解消とストレス発散、さらには日向ぼっこの場所としても利用できます。
デッドスペースとは、住居において、構造上の都合で有効利用できないスペースのことを指します。階段下や屋根裏、収納の下、凹凸のある箇所などです。
猫は狭い場所が好きなので、デッドスペースに休む場所を確保してあげるといった工夫をするとよいでしょう。
キャットウォークの設置や爪研ぎ環境の整備など、猫と暮らすためのポイントは数多くあります。しかし一方で注意点もあるので、ここで詳しくお伝えします。とくに気をつけたいのは次の3つです。
キャットウォークや猫用階段を設置する際は、猫の体格に合わせたものを用意しましょう。体格に合わないものを設置すると、落下の恐れがあります。
たとえばキャットウォークの場合、部材同士に一定の距離を設けますが、猫がジャンプしなくても渡れる距離にすると安心です。生後まもない猫や歳をとった猫を飼っている場合は、とくに注意しましょう。猫たちが怪我をしないように設備を設置することが大切です。
キッチンをはじめ、配線の多い家電まわり、ロウソクを使う仏壇など、家の中でも猫にとって危ない場所は多いです。こうした危険な場所を走り回ると、火災をはじめとした事故につながる恐れがあります。そのため、危険な場所には必ず柵を設置しましょう。
猫の誤飲・誤食を防ぐために、収納を工夫しましょう。猫が食べられないもの、危険なものの具体例は次のとおりです。
【猫が食べられないもの】
【猫にとって危険なもの】
人間にとっては安全でも、猫にとっては命にかかわるため、上記のものに近づけないような収納を意識しましょう。収納棚や収納扉にロックをかけたりするのも良いでしょう。
猫との快適な暮らしを実現するためには、猫自身の特性を知ることが大切です。猫の「好きなこと」や「嫌いなこと」をまとめたので、ご参考ください。
猫は狩りをする動物なので、本能的に高いところが好きです。高いところは獲物がいることに加えて、敵もいないため安心できます。高いところへの登り降りは猫にとっての毎日のルーティーンなので、キャットウォークや猫用階段などを設置するのが望ましいでしょう。
先述のとおり、猫は日向ぼっこを好みます。これは、太陽の光を浴びてくつろぎたいだけでなく、猫の体質にも関係しています。猫は太陽光を浴びることで、運動をしなくても体温をキープできる省エネな動物です。ほかにも、日向ぼっこをすることでダニを駆除できたり、身体を殺菌できたりする効果もあります。
猫はおっとりとした性格の子が多く、落ち着ける場所がほしいと思っています。高いところでゆっくりとくつろいだり、隠れられる狭い場所で休んだりするのが特徴です。キャットタワーの設置はもちろん、簡易的なダンボールの家などをつくって設置するのもよいでしょう。
猫は縄張り意識のある動物なので、家の中をパトロールするのが日課です。とくに縄張り意識の強い猫だと、家の中の安全が保たれているかどうか確認するために頻繁に歩き回ります。家づくりの際は、猫が安全にパトロールできるよう「導線」を確保するのがよいでしょう。たとえば、危ない場所につながる場所にペットドアを設置するといった工夫があげられます。
猫は狩りをする動物であり、狩りに備えて爪研ぎをする性質があります。瞬時に獲物を捉えるために、常に爪を鋭くしておきたいのです。猫がいつでも爪を研げるように、専用の柱を設置したり、爪研ぎ用のダンボールを置いたりするのがよいでしょう。
猫はキレイ好きであり、不衛生なところが苦手です。とくに「トイレ」は注意が必要で、おしっこやうんちが散乱していたり、汚れが目立ったりすると、他の場所で用を足すようになってしまいます。湿度を溜め込むとトイレが汚れやすくなるため、こまめな掃除が必要です。
最後に、猫と暮らす家の事例をご紹介します。
重厚感のある赤レンガ積み外壁の住宅です。施主が「猫棲館」と名付けるほど、猫にとって暮らしやすい住宅設計がされています。
具体的には、人間と猫がどちらも伸び伸びと体を動かせるフロアを設けたり、ホワイトを基調とした清潔感ある水回り設備にしたりといった内容です。
室内全体は、濃い色の梁を設けつつ、シックな照明を配置しています。外観、内観ともに落ち着きのある空間を作ることで、誰もが暮らしやすい住宅を実現しています。
本記事では、猫と暮らすための家づくりのポイントについて、次の点を中心にお伝えしました。
猫は狩りをする動物なので、高いところや走り回れる空間を好みます。ただし、自由にしすぎると、いきなり外に飛び出したり、危険な場所に入ったりする恐れもあるので、安全に配慮したうえで猫の本能に合わせた家をつくることが大切です。
猫も人間も安心して暮らせるよう、工夫を凝らしながら家づくりをしましょう。